先生にサッカー教室の話をしている空を見ていると、ここ数週間のことが夢だったのかなって思っちゃう。

平和で、穏やかな時間が流れている。

まだ、空は時々泣いたり、反抗するけど、落ち着いたと思う。

眠る時、私にくっついてくれるようになっただけでもいつもの空に戻ったんだって思える。

戻ったわけじゃないのかな。

空は、毎日成長して、変化して、新しい空になっていって。




「裕介君、ドリブルの神なんだよ」

「へ~!神なんだ」

「そう、みんなから神って言われてた。すっごくうまいの」

「空も練習したらうまくなるよ」


空は、足首を気にしてまだ右足で強く蹴れないんだと先生に話していた。


私には言わなかったことを先生に話す。

なんだか、親子っていいな。



「次の試合の日、パパも見に行くから」

「いいの?」

「ああ、できるだけ、パパも空のサッカー見たいから。どうしても無理な時もあるけど、次の試合は絶対に行く」


私をチラっと見た先生が小さく頷いた。

嬉しい。



「俺が寝かせるから、直は風呂入ってて」


私はゆっくりお風呂に浸かり、深呼吸をした。

私は、朝と夜に小さな薬を飲むようになって、そのおかげか、食欲が少し戻ってきた。

まだ数日しか経ってないからよくわからないけど、元気になってるのは確実。



「直、空、寝たよ。ちょっといい?長谷川先生と今日話したんだけど」


お風呂場のドアを少し開けた先生。


空の骨折の前に、長谷川先生のことでモヤモヤしていた。

その後どうなったのか気になっていたけど、空のことでそれどころじゃなかった。

「なんとか離婚せずに、協力してやっていこうって話になったらしいよ」

「そうなの?」

「離婚届を見せたら、本気で謝ってきたって。俺も詳しくは聞いてないんだけど、すっきりした顔してたよ」

「そっか。旦那さんが変わってくれるといいよね」