次の日、育成コースに初めてちゃんと参加することになった。
「空~!もう飛んでも痛くない?」
「全然痛くない。でも、足が変な感じ」
「そうだろうな~!ゆっくりでいいからな」
空を改めてみんなに紹介してくれた高田コーチ。
前に何度か話したことがあった、裕介君のママが隣に座ってくれた。
「治ったんですね、お疲れ様でした!大変だったでしょ」
前のサッカークラブにいたママとは違う、とても感じのいいママで仲良くなれそうだと感じていた。
「ようやく、取れました。もう……一生忘れない経験になりました」
「ですよね。ほんと、私ももう思い出すのもイヤなくらいです」
確か、お兄ちゃんが骨折したことがあったと言っていた。
「空君、絶対成長してると思うんで、そこはきっとプラスになりますよ」
「ありがとうございます!!」
練習が始まり、まだぎこちなく走る空に裕介君が声をかけてくれていた。
「優しいですね」
「よく話してたんです。空君戻ってきたら仲良くしようねって」
「骨折って、やっぱりつらいんで。それは、裕介にも話してたから」
「いい子ですね。それに、お母さんも優しい。なんだか、感激です」
そんなことないですよって裕介君のママは笑っていたけど、本当に嬉しかった。
その優しさも嬉しかったし、この出会いも嬉しかった。
「ママ~!裕介君にトラップ褒められたよ」
休憩中に空が駆け寄ってきた。
骨折して荒れている時に、高田コーチに勧められた練習方法。
頑張ってたもんね、空。
「空、大丈夫そうですね。走るのも前と変わらないし、すぐに戻ると思います」
高田コーチも来てくれて、空の頭を撫でてくれた。
「裕介、空にいろいろ教えてあげてて、しっかりしてきましたね」
裕介君ママにも声をかける。
こういう気遣い、高田コーチらしいなって思う。
「後半、ミニゲームしますので、応援してあげてくださいね」
練習の内容は変わらないのに、全然違う雰囲気だった。
コーチが声をかけると、みんな走って集合するし、話を真剣に聞く。
みんなやる気が違う。
この中で、どう空が成長するか、どう輝けるか、楽しみだな。
サッカーをしている空が好き。
だから、私もサッカーが好き。
このクラスなら、私もストレスなく、やっていける。
「久しぶりのサッカーだから、疲れてすぐ寝るんじゃないかな、空君。その後は、ひとりでお酒でも飲んで、ゆっくりしてくださいね!ギプスから解放されたのは、ママも同じだから」
裕介君のママはそう言って、爽やかに手を振った。
連絡先を交換するでもなく、深い話をするでもなく、
とても、心地よい会話で、癒された。
好きだな、裕介君も、ママも。


