先生が向かった先は、懐かしい私たちの出会いの場所。
大好きな場所。
高校……
今日学校を休んだ先生が学校に行くなんて、絶対ダメじゃない?
高校には行きたいけど、平日だし、生徒に見られるし!!
先生は、鼻歌を歌いながらニヤニヤしている。
「先生っ!2時ってまだ授業あるでしょ」
「だからいいんだよ。6時間目終わると、絶対入れない。部活始まる前じゃないと」
「そんなことして大丈夫なの?」
「ちょっとだけならって許可もらったんだよ~。ふふふ」
悪い先生。
でも、嬉しくて、嬉しくて。
「いろんな先生に相談したんだ。直のこと。みんなに俺怒られたよ」
「そうなの?先生、怒られたの?」
「ああ、アドバイス、かな?自分の時の後悔があるって。子育て全然協力してなかった先生もいて」
先生は協力してくれてた。
気遣ってくれたし、褒めてもくれた。
「直は、頑張り屋さんだからなぁ。俺に心配させないように頑張ってたの、わかってたはずなのに」
「もう頑張らないようにする」
「そうだぞ。俺に頼れよ」
頭に乗せられた手が温かい。
先生は休み時間にかぶらないよう、遠回りして時間を調整していた。
「最近は、体育祭も文化祭も来てなかったからな。直には、高校に行くってことが必要なんだよ。直は直なんだから。母になっても、ばあちゃんになっても、ずっと直は直なんだよ」
車が、校門を抜け、坂道をのぼる。
「何度も夢に見たの。この坂道走ってて、先生が後ろから追いかけてくるの。夢の中では片思いのことが多くて、ちょっと話せてドキドキしてる」
「かわいい」
「この道、変わってないね。懐かしい」
「直も変わってない」


