―先生とのデートー


先生のご両親が来てくれて、空と遊んでくれることになった。
明日、ギプスが取れる空。

最後にギプスにいっぱい落書きをしていた。



「久しぶりのデートだな」

助手席に座るのも久しぶりだった。
いつも後部座席で空と座っていた。


「懐かしく感じちゃう。運転姿こうして見るのも最近ないもんね」

「俺は、バックミラーで直を見てるけどね」

「え、そうなの?」


私は、先生を見てなかった。
ほんと、空ばかりの日々だったんだなぁ、と気付く。


「病院調べてくれてたんだね」

「喜多先生に電話して相談したんだよ。一番信頼できる病院だって聞いたから」



心療内科って、よく耳にするけど、自分が行く場所だとは思ってなかった。
でも、育児の大変さで自分が自分でなくなっていく感覚が怖くて、ネットで症状を調べると、心療内科を勧める記事を多く見た。



「デートデート、ランチは何がいい?病院の近くにベトナム料理とインド料理見つけたんだけど」

「ベトナムとインド?なんか、面白そう」

「だろ?空がいると入れないだろうから、変わったの食べたいな~って」


先生が調べてくれたお店の情報をスマホで見せてくれて、どちらも美味しそうで、今から病院に行くってことを忘れそうだった。

きっとね、先生の優しさ。
私の緊張感を取り除く為の優しさだよね。


「じゃあ、ベトナム料理に決定だな。生春巻き食べ放題ってのに惹かれたんだろ?」

「ふふふ。バレた?」


食欲もなかった。
どんどん体重が減っていた。


今日は、なんだか食べられそうな気がする。


「空がいると、落ち着いて食べられないもんなぁ。他の子よりは座ってくれる方だったけどやっぱり子供いるとなぁ。直は、空が生まれてからそれが毎日だったんだから……」


伸びてきた手が私の頭の上に。


キュン。
私、キュンとしてる。

先生に恋してる感覚が戻ってきて、泣きそう。
嬉しい。


大げさだけど、昨日先生に抱かれて、こうしてデートしていると、

生きてるなって、本当に感じることができる。