「直、おみやげだよ~」

コンビニで買った3つのプリンを持って家に帰ると、そこにはいつもの直はいなかった。

プリンを買ってきたのに、直はとても元気がなかった。



「ママにプリン買ったんだよな、空」


「空が全部食べていい?」


「ダメだよ。ママに買おうって言っただろ」



作り笑顔はすぐわかる。


直が高校生だった頃、よく見ていたから。

俺を安心させる為に、つらいのに笑って。
我慢の限界なのに、平気なフリして。



「直、先に空と風呂入るよ。ゆっくりひとりでプリン食べていいよ」


「でも……みんなで食べよ」


直は、おどおどしたような顔をした。




「飯の前にデザートってのもたまにはいいだろ」


「ごめんね。ありがと」


「空、先に風呂入るぞ。ラップ巻くぞ」




空は慣れた様子でキッチンからラップを持ってくる。
ギプスに巻いて、水が入らないようにする為。




直、どうしたら直が楽になれる?


子供を持つって本当に難しい。

初めてのことでわからないことだらけだ。

俺は、父親になっていたつもりだったけど、まだまだ未熟過ぎる。

今回の骨折で、初めてわかったことがたくさんある。

直の力になりたいと思っていたけど、父親としての俺は、きっと直にとっては力不足だったと思う。



直と空がいつも笑っていたから、安心していた。

でも、今までも、ずっと順調だったわけじゃない。

直は、俺が忙しい時や学校のことで悩んでいる時、空の悩みはひとりで抱えていたんじゃないか。



直だって、お母さんとしてまだ3年。

俺と同じで、何もわからない状態で始まったんだ。



でも、お腹に赤ちゃんが来てから直はどんどん母親らしくなっていたし、安心していた。






いつもより長い風呂から出ると、直は笑顔でグラタンを運んでいた。


「空~、グラタンだよ」



直にはひとりの時間が必要なんだと思った。

24時間、空と一緒にいることは、今の直にとって、かなりストレスだろう。

愛しているからこそ、空の気持ちがわかるからこそ……