お姉ちゃんと話している間、空はぐっすり眠っていた。

空、ありがとう。

久しぶりにゆっくり話せて、心がとても軽くなっていた。

ミルクレープも、レモンティーも、今の私にとって必要だった気がする。

癒された。



「空、起きるまでいるよ」


「こんなに寝るの、久しぶりだよ」


「空も疲れてんだよ。大好きなお母さんに反抗するって疲れるから」


妙に実感がこもっていて、顔を見合わせて笑った。

いつか笑い話になればいいと思っていた。

こうして、本当に笑い話になるなんて、あの頃の私には想像できなかった。



どうして、こんな日々が続くんだろう。

どうして、お姉ちゃんは一緒にご飯を食べないんだろう。

どうして、私をかわいがってくれないんだろう。



そんなことをずっと考えていた。



「あ、動いたね。触っていい?」


お姉ちゃんは、ニヤっと笑って、空に近付いた。

空は、時々会うお姉ちゃんにとてもなついていた。


きっと、このハイテンションが子供には嬉しいんだろう。



「空ぁぁ~!空、なみちゃんだよぉ~!寝起きもかわいい~」



まだぼーっとしている空は、ニヤニヤと笑って、お姉ちゃんの手を掴んだ。



「お、力強いねぇ、さすが空だね」


寝起きの空がこんなにもご機嫌なんて、最近ではなかったな……


抱っこしてほしいのに、抱っこすると怒り出す空。

素直になれないだけってわかってるのに、イライラしちゃう自分もいた。




「美味しいケーキ買ってきたから食べようね。空の好きないちご味だよ」


「食べる!空、起きる」


「食べよ~!空、えらいねぇ。こんな重いのつけてるのに、頑張ってるね」


空は、心から嬉しそうな顔をして、右足のギプスをお姉ちゃんに触らせた。


母親だから、大好きだからこそ、見せられない顔もある。

空は、必死で戦ってるんだ。