「弁償なんてしなくていいから…その代わり…」


王子は私をチラッと見て小さくあくびをした。

そして…


―パサッ


ん?パサッ?

音がして、自分の手元を見た。

気がつくと私の手には団扇が握らされていた。


「あのー…
これは一体…」


私は眉間にシワをよせて王子を見上げた。

すると王子はまた窓際によしかかり、そっと目を瞑った。

そのせいで今度は私が王子を見下ろす状態になった。

え…もしかしてこのタイミングで寝るの!?

次の瞬間、王子の口から出た言葉は衝撃的なものだった。


「…俺の、扇風機になって」


それは、私の"王子と会話する"っていう夢が叶った瞬間でした。


「……………は?」