「…さっきまで、山盛りのみかんがあったのに……」


ボソッと王子が呟く。

あぁ、夢の話ね


「残念だけど、みかんはないよ」

「………えっ、なんで」

「全部夢だからだよ」


私が真実を伝えると、王子はあからさまにしょんぼりした顔をした。

そんな…母性本能をくすぐるような顔したって…ないもんはないんだからっ

とか思いつつも、私は自分のスカートのポケットに手を入れた。


「代わりに…レモン味の飴ならあるよ?」


まぁ同じ、柑橘系だし


「…くれんの?」


私が手に持っている物を見た瞬間、王子の目がパアッと輝いた。

最近、王子って何考えてるかわかりやすすぎ。

相変わらず、滅多に笑ったりはしないけど。


「はい」

「……ありがとう」


王子は私から飴を受け取ると、袋をあけて直ぐ様口に入れた。