あおさんは一瞬、シュンくんを見てから、私の前にやって来た。

フワッと香水の匂いが鼻をくすぐった。

なんだろう、この匂いどこかで…


「名前、なんて言うの?」

「えっと…春の香りで、春香っ」


あぁ、わかった…


「春香ちゃん?」


春のにおい。


「そっか、そうなんだ」

「うん?」


あおさんは口に手を当ててクスクスと笑い始めた。


「本当に、私が大好きだったんだねーゼンくんはっ」

「…っ、それだけが理由じゃねーよ」


なに?なんだろう、なんの話?


「あおーっ!」


遠くで、学ランを着た男の人があおさんの名前を呼んだ。


「あ、行かなきゃ」

「彼氏…?」

「ううん、でも付き合うかも。
告白されて、迷ってたんだよね」


あおさんはニイッと笑うと、シュンくんの肩をトンと叩いて言った。


「だから、ゼンも頑張れっ!」