「あ、お気をつけてー」

「おー」


そう返事をすると、田熊はだるそうに背中を向けて歩きだした。


「…田熊!!」


私は言い忘れていたことを思い出して、田熊を呼び止めた。

田熊はめんどくさそうに首だけをこっちに向けた。


「靴紐、ほどけてるよ!!」

「…あ………」


田熊は自分の足元を見ると、靴紐がほどけているのを見てしゃがんだ。


「それと、さっきの話だけど…幸せかどうかは本人が決めることだよ。だからあんたが決めることじゃない。」


きっと幸せにできるよ、田熊なら

靴紐を結び終えた田熊はスッと立ち上がって、小さく「どーも」と言うとまた歩き出した。


きっと…田熊にとって今の恋は最初で最後の最大の恋だと思う

だからどうしても…幸せを願わずにはいられなかった


田熊みたいに少しでも希望のある恋を自ら諦めるのはもったいないよ

でも、私の恋に希望はあるのかな…

王子を好きでいたって希望なんかないのに…私はなんで王子が好きなんだろう?

好きでいる意味が見付かんない…