天然王子

 

「…え、待って、なんで泣いてんの?」


珍しく王子が焦っていた。


「だって……
絶対嫌われてるもん…」

「…え、は?誰に?」

「……広瀬くん…」


王子は「俺?」って顔をしてこっちを見ている

だって関係ないとか言うし…


「せっかく…心配して捜してくれて…嬉しくて、ありがとうって言いたかったのに…なんか誤解されて…気まずくなって…しかもなんか最近避けられてるっぽかったし…」


だってしばらく王子の姿見てなかったし…

私は下を向いたまま続けた。


「でもほんと田熊とはなんでもないから!!あれは事故でして…
あ、たくまってゆーのはこないだの人で!」

「…うん、もーいーよ」


顔を上げると、相変わらず王子は無表情だった


「お願いだから…嫌いにならないで…」


言ってからまた涙が出てきた。

王子に嫌われるのは、何よりもどんなことよりも一番辛いよ。