キミじゃなきゃダメなんだ



機嫌を損ねた私を見て、先輩は困ったように笑う。

申し訳なそうに、頭を撫でてきた。

そして優しい声で、言った。



「名前、呼んでくれてありがと。好きだよ、百合」



....知ってる。

充分、知ってるよ。


「わかってますよ。教室戻りますっ」

「はいはい。じゃあね」


踵を返して、ずんずん歩く。

でも途中で、なんとなく振り返った。


先輩も、階段を上がる途中でこっちを見ていて、また目があった。


彼は数秒私を見つめていたけど、いつものように小さく笑った。


ちょっと嬉しそうな、幸福な笑顔だった。









End.