キミじゃなきゃダメなんだ



目だけ動かして、汐見先輩の黒髪を探す。

先輩の背は、高くも低くもなく。だと思う。

たぶん百七十三とか。そのへん。今度訊いてみよう。


汐見先輩の姿は、開始十秒くらいで見つかった。

だけど、声が出なかった。


....女子と話してる。


珍しい。

少なくとも、私は校内で彼が女子といるのを見たことがなかった。


何話してるんだろう。

汐見先輩の表情からして、特に楽しい話題という訳ではなさそうだけど。


....きれいな女のひとだ。

大人っぽくて、おしとやかな雰囲気がある。

さらさらなロングヘアー、やわらかな微笑み。


私と百八十度違う、その女子の先輩は、汐見先輩にとてもよく似合っていた。



「.........」


彼の目が、私以外の女子を見てる。

だけど、笑ってはいない。

そのことに、ひどく安心した。



「あれー、マルちゃん?」



聞き覚えのある声が背後からして、びくりと肩が跳ねた。

振り返ると案の定、不思議そうな顔をしてこっちを見てる松原先輩がいた。