「…今日はいい天気よなぁ」

 私、朔夜は今日も桜の下で桜と対話していた。周りから見れば、面妖と言われるであろうこの行為は、幼い頃からしている。

私は、植物の声がわかる。

例えば、それが、雑草であろうと。
夏に咲く、美しい向日葵であろうと、
秋に散りゆく、椛であろうとも、

植物はみんな、優しい。
人間とは違う。

【朔夜はいつも来てくれるね、花が咲いてもいない桜に、いつも。】
「…我は、桜は、いつも綺麗と、思う。」

桜は、枝をふわふわ、揺らす。

「…」
【ふふ、ありがとう、朔夜は優しいよ】
「…そう、なのかな」
【そうだよ。優しい。】

桜のほうが優しいのに、我は根本を撫でる。

「…退屈や、ないの?」
【朔夜のことを考えれば、退屈なわけないからね。】

桜は、やっぱ優しい。