『私、アセロラジュースで!』


店員さんに勢いよく飲み物をオーダーする私。


そんな私に、驚いた顔を見せる奈々と由樹君。





『二人とも、どうしたの?』


私は何もなかったかのように、そう、二人に問いかける。


二人は顔を見合わせ、そして、二人して困った顔を見せてくる。





『え、どうしたの?』


聞き返すも、由樹君も奈々もため息をついた。






『知佳さ、どういうこと?』


奈々はちょっと怒った顔をして、そう問いかけてくる。






『どういうことって、どういうこと?』


私は奈々にそう聞き返し、飲み物の支払いを済ませる。






『だから、崇人にフラれたって、どういうこと!?』


奈々の大きい声が店内にこだまする。





『ちょ…奈々!』


私は慌てて、奈々の口を手で押さえる。







崇人に失恋した、その事実だけでも、結構きてるのに。


そんな大きな声で言われても……ほら、他のお客さんの注目の的になっちゃってるよ…






『あ、ごめん……。
 でも、納得いかなくて…』


奈々は申し訳なさそうに、そう謝り、そして悲しそうな顔に変わる。





うん、私も、“なんで?”って思う。

崇人本人から“好き”って言われたわけじゃないけど。


由樹君や奈々の推測、奈々からの告白の時に、“崇人は知佳が好きだった”とか言われて否定しなかった…


だから。


その様子を見てたから、だから…期待、しちゃったんだけどな…。



でも、肯定もしなかったよね…あの時。




『うーん……やっぱり、崇人は私のことなんて好きじゃなかった、そういうことでしょ?』



うん。


そういうこと。


私は一人、納得しながら、店員さんから飲み物を受け取った。






『…けどさ、絶対に崇人は知佳のこと好きだと思うんだけどな…』


奈々のその言葉に、ズキンッて胸が痛んだ。





『それは奈々の勘違い。
 もう私はフラれたの!
 
 うん、この話はおしまい!』


私はそう言って、笑って見せるけど、奈々も由樹君もため息をついた。






そうだよ。


そういえば、別れる時も、“好きな奴ができた”、そんなこと、言ってたもんね…。






バッカだな…私。


崇人にそんなこと、言われてたじゃん。


なんで忘れてたんだろう…。




バカだな…


バカ……





本当にバカ…