幸乃の頭を僕の膝に乗せる。
少しだけ、少しだけ幸乃の温もりを感じられた。
もう死後硬直が始まってしまっているけれど、少しでも温もりを感じると、幸乃はまだ生きているような気がした。
もう一度、やり直せるような気がした。
「けど、それもただの夢……願望だ」
カタチにはならない、ただの妄想だ、夢だ、願望だ。
そんなケムリのようなもの。
「せめてもの、償いだよ」
それを知っているから、僕は嘆いているじゃないか。
だから僕は幸乃の血がついたナイフの刃をを自分の手首に押し付けた。
「ただの、償いだ。何にもならない」
知っているけれど、気休めだけど。
ほら、君の血と混ざり合っているよ。
体で混ざり合うことが出来なくても、これくらいでもいいんじゃないか?
君はどう考えているか分からないけど、僕はこれで十分だ。


