――【手順は、也村健太のときと同じにしてください】
家の時計が、9ぴったりを指した。
生憎今日は、母さんと父さんが出張で家にいなかった。
僕はまた新しいボストンバッグを押し入れから抜き出し、外に出た。
今日は普通の格好で、だ。
走って1分もしないところに、幸乃の家がある。
僕は幸乃の部屋がある窓に小石を投げ入れた。
「いたっ……誰よ、もう」
幸乃の体に命中したらしい。
幸乃の顔が窓から覗く。
「誰?! ……り、凛太郎!」
「なんか、寂しくて遊びに来ちゃった」
僕が頭に手を当てて言うと、幸乃はすぐに窓から引っ込んでしまった。
その数秒後、「お母さん、あたし友達と会ってくる!」という元気な声を出して玄関から飛び出てきた。
「ど、どうしたの、凛太郎。今日は本当に」
「会いたくなった」
ごめん、それ嘘。
心の中で、小さく呟いた。
それは君を殺す為の口実なんだ。
「驚いた……公園にでも、行く? お母さんにはちゃんと言ったし」
「うん、行こうか」
幸乃が小さな足取りで歩き始めた。
それについていく、僕。
とても時間が流れるのが遅くて、のんびりしていて、涙が出てしまいそうに静かだった。
だから僕は足を止めてしまった。
「ん……? どうしたの」
「……しょ……?」
「え、何? 凛太郎」
幸乃が少し悲しそうに言ってきた。
僕は腕を目にあて、涙を見せまいとしながら叫んだ。
「知ってるんだろ、今から僕が何をしようとしているか!」


