殺人ごっこ

「ごめん、今日は。それと……ちょっと聞きたいんだけど」

夕暮れ、僕は幸乃を家の前まで送っていった。

「ん? なに?」

彼女は家に入ろうとする手前で振り返り、笑顔で聞いてきた。


「幸乃は、人を殺すのに抵抗はある?」

「当たり前じゃない。だって人殺しよ、犯罪じゃない」

「それが最も嫌いで憎い相手だったら?」

「そうしたら、殺しちゃうかもしれない……抵抗はあるけど、怒りにまかせて」

「それじゃあ……それがとても愛おしいと感じる相手だったら?」

彼女は馬鹿ね、と言って笑顔で言った。


「絶対に出来ない。あたしの命に代えても、殺さない。そしてあたしの愛おしい相手は、凛太郎よ」


もういい? と彼女が言った。

長い時間引き止めてしまったみたいだ。


「それじゃあ、最後。その最愛の人に殺されるのであれば、別に憎まない?」


彼女の顔が、一瞬物悲しげになった。

最愛の人……僕のことを表しているから、だ。


「貴方に殺されるなら、本望よ」