テクサレバナ

◇  ◇  ◇




あれから、特に何も起きなかった。


まだ、父さんも母さんも死んでいない。




だけど、いつ父さんと母さんが手腐花に殺されるかわからない。




だから、俺は、今までまともな会話を交わさなかったが、今では毎日楽しく父さんと母さんと喋るようにしていた。


食器洗いも洗濯もある程度手伝い、それなりに親孝行をしているつもりだった。




俺が笑うと、父さんと母さんも笑って。




それなりに、幸せだった。




どうして、今までの俺は気付けなかったんだろう、父さんと母さんが、いつも俺のことを思って発言してくれていたのに。


どうして、もっと早く気付けなかったんだろう。




もっと早く気付いたら、きっと、手腐花なんか見えなかったはずなのに。


手腐花なんか、必要としなかったはずなのに。




たまに、そんなことを考えてしまう。