そして、俺は何も喋らず、ただ歩いた。


如月は、そんな俺の後ろにくっついて歩くだけだ。




「………」




そうして、何分経っただろうか。


いや、何時間も経ったように、俺には感じられたが。




俺達は、手腐花のところに来ていた。


血のような赤い花が二つ。


父さんと母さんがまだ呪い殺されていない、という証拠だ。




よし、殺そう。


手腐花を、殺そう。




『“千紗子”を殺した、手腐花……を』




頭の中で、そんな声が聞こえてきた。




何だ、今の声は。


千紗子…って近江のことだろ?


ここにいる二人で、近江のことをそう呼ぶのは如月くらいだけど……如月は何も喋っていない様子だし…。




空耳か。




そんなことよりも、手腐花を殺そう。




そう思って、俺が手腐花を引っこ抜こうとしたときだった。




「や、やめようよ!


まだ時間はあるんだよ!?」




と、如月が俺を止めた。