テクサレバナ

ワイワイ楽しそうに準備するクラスメイトの声に紛れて、俺は誰にも気付かれないように、教室から出ようとしたが、




「ねえ、ちょっと」




と、俺を止める奴がいた。


文化祭実行委員の、近江千紗子だった。




近江千紗子は、いつもは下ろしている髪を一つにまとめていて、ダサイ眼鏡の奥にある目で、ぎろりと俺を見つめる。




「田中君、どうして帰ろうとしているの?」


「だって、することないし…………」




口をもごもごと動かせながら、俺は言った。


喋るのは、あまり得意ではない。