2番目の唇


この会社で“企画”と着く部署は2つ。

経営企画と営業企画。


どちらも陰でひっそり仕事してるウチとは違い、華やかなエリート部署だ。

経営に携わる経営企画部は限られた人間しか入れない上の方のフロアにあるが、電話の相手が言っていた営業企画部なら般フロア。

社員であれば出入りは自由だし、夜間のドアロックも無かったはず。

しがない平社員である私でも入れる。


残業時間の延長は嬉しくないが、困ってるエリート社員でも見れば少しは気が晴れるかもしれない。

扱いづらいオジ・・・年配の方でもなさそうだし。

そこそこ若そうだった電話の声を思い出し、私は簡単にデスク周りを片付けた。


地上に出るなら、ここに戻って来る必要はない。

ちゃちゃっと対応して、そのまま帰ればいいわけだし。


私は大きめの通勤バックを持ち、少し考えて幾つかの工具を放りこむと、後で帰って来るかもしれない課長席を照らす一番奥以外の照明を消して部屋を出た。