にじいろ。




「ごめん、今何か言った?」


その言葉は
少年にも聞こえていたのだが、
彼はわざと聞こえていないふりをした。


生まれて初めてお礼を言われた彼は、
どうリアクションしていいのかが
わからなかったのだ。


「何も言ってないですよ」


少女は彼の背中に顔を埋めた。


彼女もまた、小さな嘘をついた。


この瞬間がとても嬉しくて、
でもなんだか照れくさくて、
面と向かって同じ言葉は言えなかった。


幻想的に輝く夜の景色は
夜空を舞う小さな2人を包み込んでいた。