「やあ、沖永くん」


沖永。


それは
この青年の苗字である。


さっきは誰もいなかった公園に
短い台詞が響き渡った。


「覚えてる?私のこと」


彼にそう尋ねる彼女は
まさに当時嫌われ者として扱われていた
あの少女だった。


もちろんだ。


覚えている。


忘れたことなんてない。


「……城崎」


少し間を置いてから彼女の苗字を呼ぶ。


記憶の中での彼女と実際に会った彼女とでは
19年の差があるけれど
昔の面影はちゃんと残っていた。