「おじょーさん」 突然 誰かが誰かを呼ぶ声がした。 どこかで聞いたことのあるような声だったけれど その声の呼ぶ対象が自分であると 思っていなかったあたしは 足を止めることなく雪の上を進み続ける。 すると 「あ、無視?」 その声は さっきよりも聞こえやすくなっていた。 そしてその一言で これが自分に向けられている言葉だと 初めて認識した。 同時に その声の主が"彼"であることも。