にじいろ。




「……桜、綺麗に咲いたな」


窓越しに見える満開の桜。


風に揺られて少しずつ散る花びらが、
開いた窓から入ってくる。


薄いピンク色が、
色の無いこの部屋ではとても鮮やかに映えた。


「今年も綺麗に咲いたね。
すぐ散っちゃうのは少し寂しいけど」


彼女と同じ名前の花は、
咲いてすぐ儚く散っていく。


ベッドに備えられた机に落ちてきた
花びらを見つめながらそう言う彼女の表情も、
近いうちに消えてしまうのではないか
というほど儚く感じた。