「春野くん、いいこと教えてあげようか」 「え……」 突然の彼女の問いかけに、 ユウタは少し戸惑った。 "いいこと"とはどういうことなのだろうか。 彼女にとって得なことなのか それともユウタにとってのものなのか。 そんなふうに考えているユウタをよそに 彼女はは続ける。 「私はね、春野くんに助けられたんだよ。 危ないってあのとき叫んでくれたから、 私は生きていられるんだよ」 だから、と 彼女はそこで言葉を切ってにこりと笑い、 再び口を開いた。 「だから……笑って?」