俺の隣には裸の銀髪少女が眠っていた。
俺は目を閉じる。
こんな幻覚は初めてだ。
しばらく目を閉じてからゆっくりと目を開ける。
状況は変わらず少女は眠っている。
その絹のような肌を通して心臓の音が伝わってくる。
少し動いたかと思うと少女が目を開ける。
美しい金色の瞳に長く上向きなまつ毛、人形をそのまま現実(ここ)に連れ出したような少女がここにはいた。
触れられるほど近くに居るのにまるで画面にいるようで、とても遠く感じるその存在。
「おはようございます、紅葉」
名も知らぬ少女は俺におはようと言った。
知らない。
どうしてこうなったのかを記憶を片っ端から探してみる。
締切に終われ朝までパソコンに打ち込んでいた。その日は中学卒業式でなんとか無事に終わり家に向かう。
向かっていた。
向かっていたけれども、眠気の限界だった俺はきっと倒れてしまった。
そんな俺をなぜだかここに運んでくれたのだろう。
わからないけれど。
思い出していたその間に少女はワイシャツを着ていた。
俺のベットにはかすかな温もりが残る。
「よくわかんないけどありがとな。名前は?」
尋ねても返答はない。
無表情のままだった。
「俺の名前は紅葉。望月紅葉だ」
言葉がわからない、ということではないようだ。
少し考えてから少女は言った。
「メヒア。大体の方はそう呼ばれます」
相変わらずの無表情で。
だが怒っているようには見えない。
そして俺はメヒアに聞かなければいけないと思った。
「メヒアはなんで俺を助けたんだ?」
「倒れてたから」
そっけなく答えた。理由になっているかも定かでない答えを平然と答える。
でも、俺が倒れていたのならどうやって俺の部屋まで運んだのだろ。メヒアに力があるようには見えないし、俺はメヒアを知らない。
見かけたことさえもない。
こんな可愛らしい少女を見かけたのなら、俺は絶対に覚えているはずだから。
「メヒアどうやって……」
その言葉を遮るようにして
「覚えてないんですね」
そう言った。
無表情なままだったけど少し悲しそうに俺をみつめる。
なぜそんな顔をするのだろう。