「はっ、何バカな事言ってんだよ。あの話ってあれだろ?鏡の中に幽霊がいるってやつ」


登校して来たばかりなのに、私達の話を聞いていたのだろうか。


私の彼氏で、隣の席の京介が軽く私の頭に手を置いて席に座った。


「そうそう、それそれ!何年か前にも同じ事があったらしくてさ、その時は自殺で処理されたみたいなんだけど、片桐さんが自殺なんてすると思う?」


「落ち着けよ雪村。もしかすると、家のゴタゴタがあったかもしれねぇだろ?誰も分からねぇ悩みくらいあるだろ」


京介の言うように、片桐さんにしか分からない悩みがあったのかもしれない。


でも、どうしても私は昨日のあの言葉が頭から離れなかった。


この高校には、有名な怪談話が三つある。


その中の一つに、片桐さんが言った事が関係しているように思えたから。


一つは、「生徒が消える美術準備室」。


一つは、「どこから聞こえる呪いの声」。


そしてもう一つ、「鏡の中にいるナニか」。


なぜ、この三つが有名かと言うと、実際にそれらが起こった事があるから。


その中の一つ、「鏡の中のナニか」。


鏡の中に、自分以外のナニかが映っても、気付いてはいけない。


気付いても、気付いた事を気付かれてはいけないという事に関係しているような気がしたから。