俺は病室を出てしまった。

葵に会ってからよく泣くな、、、俺。

そんなとき、指導医の斉藤先生が通りかかった。

「立花、、、?お前また、泣いてるのか!?
ハハッ。本当によく泣くヤツだな。」

「そんなこと、言わないでくださいよ。
好きで泣いてるわけではないんですから。」

「、、、分かるよ。
好きな人が病気で、、自分がなにもしてやれない悔しさと、彼女の口から出てくる言葉に胸が詰まることも、
全て話さないといけなくても、相手のことを考えると言えなくなることも。」

えっ、、、?

「俺の奥さんもな、、、白血病だったんだ。
結婚して、2年目の春。ちょうど今の季節だったかな。

辛い治療を見てきてさ、なにもしてやれないもどかしさ、
苦しんでる姿を見るのができなくて、、、

妻が死んで、半年後だよ。
留学して、外科医になったのは。それまでは、
血液外科の医者だった。

逃げたんだよ、、、」


斉藤先生の目には涙が浮かんでいた。
初めてだった、、、
斉藤先生の気持ちを聞いたのは。