私は手ぐしで髪を直しながら、陽介をただただ見つめた。
私は、陽介に何も聞かなかった。
気になるけど。
聞かれたくないことだって、あるから。
だから聞かない。
気になるけど不安になんてならないよ。
言ってくれないからって、心配はしないよ。
だって今の陽介の表情は、何かを隠したいって気持ちはなくて、何かに対抗心を出しているような、真っ直ぐなものだから。
その澄んでる真剣な眼差し、私は好き。
「陽介、ここが私の家。
一緒に帰れて楽しかった。また予定あったら、一緒に帰ってくれる?」
「もちろん」
「やったぁ!約束だよ」
「あぁ」
「じゃあ、また明日」
「また明日」
私と陽介は、私の家の前で別れた。
笑顔で、手を振り続けた。
彼の姿が見えなくなるまで。



