私の行き先を聞いた凪雲くんは、優しく微笑んだ。
……もしかして、私が記憶を取り戻したこと、気づいたのかな?
「凪雲くん、私……」
「本当の気持ち、わかった?」
私の言葉を遮って、凪雲くんは微笑みながら聞いてきた。
その声は、切なさなんてなくて、春の穏やかさをまとった、澄んだものだった。
「うん。気づいたよ。私が本当に好きな人が誰なのか」
「よかった。これで海は幸せになれるね」
凪雲くんも空のように、私の幸せを願ってくれていた。
皆してずるいよ。
私の幸せばかり気にしてさ。
自分の幸せは二の次で。
まったく……。
幸せ者すぎて、泣けてくる。



