「陽介」と呼んでいた愛しい過去を、思い出さずにすむと思って。 だけど、本当は……。 ずっと、心に残っていたんだ。 かけがえのない、たった一つの想いが。 ――琴平先輩……陽介への、初恋が。 それに気づかない振りをして、見て見ぬ振りをして 私は忘れようとしていた。 そんなの、無理なのに。 神様に祈ったって、私は思い出してしまう。 記憶を失っても、思い出したいと思ってしまった。 記憶がなくても、私は感じていた。 琴平先輩への想いは、ほかの人とは違うものだと。