「琴平先輩」
「なに?」
「あの……」
どうして今日、私を誘ったんですか?
そう聞こうとした声を、閉ざした。
私じゃなくたってよかったのかもしれない。
たまたま私が近くにいて、たまたま行く人がいなくて、たまたま誘ったらOKだった。
その程度だったのかもしれない。
デートだ!って、張り切って来た私。
だけど、琴平先輩は違うかもしれない。
所詮、片思い。
両思いだったら、どれだけ幸せなんだろう。
どうして片思いは、こんなにも胸がギュッてなるの?
潰れちゃうよ。
壊れちゃうよ。
デート。これは、デートだよ。
そう思い込めば思い込むほど、引きずり込まれていく。
苦しさに耐えなければいけない世界へと。



