「藤城くんがそんなことを……」
私の呟きのあと、琴平さんは少し驚いた様子でそう呟くように言った。
「優しいな、藤城くんは」
小さな小さなその琴平さんの声は、私の耳には届かなかった。
その声の、欠片さえも。
「もし、藤城くんの言葉が正しいのなら……」
琴平さんの声は、ザア…!と吹いた風の音により、一旦遮られてしまった。
正しいなら?
その続きが、気になって仕方がない。
「きっと本当の気持ちがわかるのは、記憶があった前の海ちゃんじゃない。今の海ちゃんでもない。記憶を取り戻したあとの海ちゃんだけだよ」
琴平さんは、私を澄んだ瞳に捉えながら、凛とした声でそう言った。



