「なんだよそれー。笑うなって、無理じゃね?」
「……先輩のかっこよさがなくなればなぁ」
ライバルが減るのに。
琴平先輩のかっこよさがなくなっても、私は好きでいられる自信あるのに。
かっこよさなんていらない。
あなたを好きになったのは、そんな理由じゃないもん。
優しさ。
彼のその温かさに、心が弾けたの。
「え?なんて言った?」
「なんでもないですー」
私はへへっと笑いながら、もう一つの卵焼きを食べた。
うん、美味しい。
恋の味より少し甘い、卵焼き。
「変なやつ」
琴平先輩はそう呟いて、小さく微笑んだ。
その笑みに、私の頬はほんのりと赤みを帯びた。



