笹道さんはそう強く言って、私の横を通り過ぎた。 ダメだ、さっぱりわからない。 どうしてそんなことを私に言うんだろう。 私に言ったって意味ないのに。 「……あれ?」 じわじわ…と、目に涙がたまり、視界が歪む。 どうして、涙が溢れてくるの? 意味……わからないよ。 記憶を失ったことで、こんなにもわからないことがあるなんて。 思ってもみなかったなぁ。 私は顔を上げて、空を見上げた。涙をこぼさないように。 私は目に溜まった涙を拭って、前へと歩いた。 見上げた今日の空は、どこか寂しげだった。