「帰るか」
「あ、……うん」
凪雲くんは小さく微笑みながら、そう言った。
私は頷いて、凪雲くんの少し後ろを歩いた。
結局、告白の返事、聞いていない。
もしかしたら、凪雲くんは返事をしていたのかもしれない。
私の好きな人は、凪雲くんではない。
そのことを教えてくれたのかもしれない。
……だけど。
「私が好きなのはやっぱり……」
君しか浮かばないよ、凪雲くん。
でも、どうしてか、そう思うたびに心が空っぽになっていっている気がする。
何か大切な想いに、霧のようなものがかかっていっているような、そんな気がする。



