「……恋が甘いなんて、誰が決めたの?
私の恋は、おかしいの?
賞味期限が切れているのかな。
私の恋は、まったく甘くなんてなくて、切ないほど苦いの」
琴平さんが持ってきてくれた本の中で、一番気に入った言葉。
何度も何度も読み返すうちに、その言葉だけは覚えてしまった。
「賞味期限が切れてしまった私の恋は、きっとこれからも甘くない。
それならいっそ、忘れてしまいたい。
だけど、忘れるなんてできない」
小さな声で紡がれていくその言葉たちに、私は恋の悲しみを感じていた。
片思いが苦しくないとは言えないけど、ううん、すごく苦しいけど、
『この恋、賞味期限切れ』のヒロインほどの切ない恋を、私はしたことがない。
今してる、凪雲くんへの想いが初めて。
そう、これは貴重で大切な……初恋。
「だってこれは、私の初めての恋だから」



