何気ない、普通の自己紹介。
私は小さくお辞儀をして、大きな声でそう言った。
ぎこちない笑顔を作って顔を上げると、クラスの皆は拍手をしてくれた。
……よかった。
ホッとして、私の中にあった緊張は少しずつほぐれていった。
「遊理さんの席は、あそこね」
「は、はい」
ラッキー。
一番後ろの窓際だ。
転校生って、こんないい席を無条件でもらえるんだ♪
今日から始まる、新しい生活。
まだ琴平さんのことを思い出せないでいるけれど、
記憶が完全に元に戻ったその時こそ、
本当に、“大丈夫”になるんだよね。
HRが終わって、休憩時間。
私の席の前の子が、振り返った。



