「海ちゃん?どうかした?」



「い、いえ…。なんでもありません」





私はパタンと本を閉じて、心配そうに私を見つめる琴平さんに笑顔を見せた。



さっきのあの変な感覚を、私は忘れられないまま、時間は過ぎた。







「じゃあ俺、そろそろ行くよ」



気づいたら、2時間ほど経過していた。



「大学、ですか?」


「ああ、休むわけにもいかないしね」




「頑張ってくださいね」



「サンキュ。
 じゃあ、また来るわ」



「待ってます」






私が言った、たった一言のその言葉。


その言葉が、琴平さんの心に深く刻まれていることを知らずに、私は病室を出て行く琴平さんの背中を見つめた。