「映画化にもされてるんだ」
「そうなんですか!」
そんなにいい話なのか、琴平さんがこの本の話をすると、とても嬉しそうな表情をする。
そんな琴平さんを見ると、笑みがこぼれる。
なんとなく話が気になって、ページをパラパラとめくってみる。
真ん中ぐらいで、ページをめくる手を止めて、本を開く。
『恋が甘いなんて、誰が決めたの?
私の恋は、おかしいの?
賞味期限が切れているのかな。
私の恋は、まったく甘くなんてなくて、切ないほど苦いの。
賞味期限が切れてしまった私の恋は、きっとこれからも甘くない。
それならいっそ、忘れてしまいたい。
だけど、忘れるなんてできない。
だってこれは、私の初めての恋だから。』
……ドクン。
やっぱり、一度見たことがあるような、そんな感覚が胸に残る。
見たことがあるだけじゃない。
この言葉どおりの気持ちを、感じたことがあるような……。
どうしてそう思うんだろう。



