琴平さんを忘れてしまった私は、私の記憶は、
絶対おかしい。
「……海ちゃん、ありがとう」
琴平さんは、私に聞こえないように小さな声でそう呟いて
私を見つめながら、泣きそうなくらい優しそうな柔らかい表情をして目を細めた。
トクン……。
なんで琴平さんは、こんな笑顔を見せるの?
なんだか、こっちまで泣きそうになっちゃう。
琴平さんをこんな表情にさせているのは、私のせい?
「琴平さん…?」
「なんでもないよ」
きっぱりとそう言った琴平さんに、私は少し納得いかないまま、それ以上何も聞かなかった。
そんな私と琴平さんを見ていた空は、苦しそうに眉を寄せた。



