空は涙を拭って、真っ直ぐな瞳を私に向けた。
私の手を握り返した空の手のひらは、もう震えてはいなかった。
「……大丈夫だよ。私はもう、陽介のことなんて」
「琴平先輩のことをまだ『陽介』って言ってるんだね」
「…!」
ハッとした私が空を見ると、空は小さく笑っていた。
……空は、わかってるんだ。
まだ陽介への想いを、思い出にしきれていない私を見抜いている。
これじゃあ、空には嘘つけないな。
私は、気づかれないようにため息を吐いた。
「ばれたか」
「バレバレだよ」
そうだよね。双子、だもんね。
そうだよ…。
私は今でも―――。
過去にしたいと思っているだけで、そうできない自分に、もどかしさを感じる。



