「クリスマスのあの日、琴平先輩、ずっと海のこと待ってたんだよ?」
……その話は、クリスマスの日、帰ってきた空に聞いた。
私はクリスマスに、空に、クリスマスイブの日に買った陽介へのプレゼントを渡すように頼んだんだ。
プレゼントを渡し終えた空は、私に言っていた。
『待ってたよ』
たった一言だけ。
私はそのことに驚いた。
てっきり、空はプレゼントを渡せずに帰ってくると思ったから。
だけど、彼は待っていた。
待ち合わせした駅前の時計の下で。
どうしてだろうと、何度も考えた。
でも、その答えは出ないまま、私は記憶の奥深くにそのことを隠した。
私の心の奥底で、ちょっぴりだけ嬉しいと感じた気持ちに気づかないフリをしたまま。
「私は、今でも琴平先輩は海のことを……」
「それはないよ。絶対ない」



