「私……『やめて』って叫んじゃったの。
それで、焦っちゃって。教室を出て、気づいたら空のところにいた」
全て話し終え、私はふぅ…と静かに息を吐く。
胸を抑える手を下ろし、意味もなく髪をいじる。
「そっか……。辛かったね、海。
凪雲くんはその時いなかったの?」
「うん。生徒会の方の仕事しに行ったから」
凪雲くんは去年に引き続いて、今年も生徒会役員。
三年生になったら、会長とか副会長とかを狙ってるんじゃないかって予想してる。
「笹道さん、やっぱり猫かぶってるかもね」
「え?なんで?」
「だってそうでしょ?海を苦しめてることなんて、海の表情見ればわかるのに、話を続けたんだよ?」
そんなに私、わかりやすいかな?
い、いや、今はそんなことより、私の表情でいくら私の心情がわかっても、そこに確証はないから、私だったら「本当にそうかな?」って疑問を抱くだけ。
「それに琴平先輩もおかしいよ」
「え?」
どうしてここで、陽介のことが出てくるの?



