「ひ、久し振り。……笹道さん」
急に笑顔を作るのが、難しく感じた。
無理もない。
だって笑いかける相手が、彼女なんだから。
「どうぞ、空いている席に」
「ありがとう。わぁ、店内可愛いですねっ」
「そう言ってもらえて嬉しいです」
ああ、胸が苦しい。
胸が締め付けられているようで、苦しいよ。
私は無意識に、手で胸を抑えた。
「ご注文はどうしますか?」
「ココアとクレープください」
「かしこまりました」
私は小さく頭を下げて、一旦笹道さんの座る席から離れる。
辛い。
陽介の今の彼女といる空間も、時間も。
最低だよね。
こんなこと思うなんて。



