「海」


私を呼ぶ声がしたのと同時に、頭をポカリと軽く叩かれた。



「痛っ」


「接客ちゃんとしなきゃダメだろ?」




私の頭を叩いたのは、凪雲くんだった。


私は頭を抑えながら、「はーい」とふてくされながら頷く。




「ずっと空の相手しないで、オーダー聞かなきゃダメじゃん」


「あ、そうだった!忘れてた…。
 空、注文決まった?」




空の浴衣に気を取られて、すっかり忘れてたよ。


私はあははと笑ってごまかしながら、空に聞いた。




「チョコドーナツください」


「かしこまりました」





凪雲くんは呆れた顔で私を横目で見ながら、そう言った。

私も慌てて「かしこまりました!」と言う。



凪雲くんに助けられてばっかりだ。


私ははぁ、とため息をつく。




ダメだなぁ、私。