「じゃあ俺ら、そろそろ行くわ」
前会長がそう言って、陽介と一緒に私たちの前から去っていった。
私はペタン…と、力なさげに座り込む。
「海、大丈夫!?」
凪雲くんは心配して私に駆け寄り、焦った様子でそう言った。
「大丈夫……じゃ、なかったよ」
泣きたくて、泣いてしまいたくて。
だけど、泣いたらダメだと思うんだ。
泣いてしまったら、前へ進んでいた自分を否定してしまうような気がして。
「辛かった。陽介の声を聞いたら、好きだって思っちゃったの。
思い出になんて、できてなかった」
もう心はボロボロで、笑顔さえ作れない。
声がだんだんと大きくなっていく。
まるで自嘲するように。
「バカみたい……」
忘れることもできなければ、思い出にもできてなかったなんて。



