「久し振り、海」
陽介の声が、はっきりと聞こえた。
久し振りに聞いた大好きだった人の声。
思わず、顔を向けそうになった。
でも、視線を落としたまま
「お久しぶりです」
と小さな声で言った。
どうして今でも「海」って呼ぶの?
どうしてそんなはっきりとした声で言えるの?
ゆっくりと横目で陽介を見ると、陽介の表情はもどかしげで切なそうだった。
一瞬、息をするのを忘れた。
どうして、どうして。
どうして泣きそうなの?
心がギュウッと締め付けられて、苦しい。
もう初恋は過去のモノしたのに、思い出にしたのに。
すぐ引き戻される。“今”へと。



